日本三大急登、甲斐駒ヶ岳黒戸尾根。
本格的にランニングを始めてから8ヶ月、いつか黒戸尾根に挑戦してみようと思っていたが、とうとうその日が来てしまった。
気まぐれな性格なので、何となく行こうと決めたのは前日の夜だった。
山岳ガイドとして、厳冬期でも何度も案内している黒戸尾根だが、いざトレランで挑戦するとなると武者震いにも似た感覚を覚えた。
その長く厳しい行程を熟知しているからこその緊張もあるが、それよりも不甲斐ない結果に終わってしまうのではないかという不安が大きかった。
未だトレランレースやフルマラソンレースに参加したことが無い身としては、黒戸尾根に挑戦することで、自身の実力を露呈してしまう事の恐怖があったのだ。
きっと、想像するよりも上手くいかないことの方が、断然多いことを経験上知っていたからである。
誰が見ているわけでもない自己の挑戦だが、私自身が私を失望したくはなかった。
登山計画書には行程8時間30分と記入したが、内心はどこまで縮められるか静かな闘志を燃やしていた。
序盤から、いつも以上に心拍が上がる。
普段は自由気ままにリラックスして歩くが、この日は焦る気持ちが勝っていることを嫌でも痛感する。
きっと順位やタイムを競う大会になると、こんなもんじゃないだろう。まるで追われるような感覚に精神的弱さを思い知らされる。
七丈小屋を過ぎ、8合目御来迎場を過ぎると、高度と疲労で足が重くなってきたが、それでも動かした。
山頂に到達する高揚感でアドレナリンが湧き出る感覚と、今までの自分とは違う激しい呼吸音と共に目的の場所に立った。
up3H9m
down2H
今までの地道なトレーニングが結果となって表れた気がして、一人自分を誇った。
次の目標は3Hを切りたいが、先ずは身体を絞り切らないとダメだろう。
目標の体脂肪率を手に入れたら、もう一度挑戦しようと思う。